「その様子じゃ経験ナシか。ま、逆にあったらびっくりだけど」
昼間あんなにも最低なことを言ってきた奴に答えたくもない。
だけど、どうにもわたしの反応で察せられてしまったらしい。
「俺、処女とヤッたことないんだよね。そのまま結婚するまで守っといて」
「っ、」
「身体は正直だってこと、手取り足取り教えてやるから」
「や…っ!」
耳元に慣れない声。
クスッと笑って、ふっとかけられた息。
今にも逃げたいのに身体がぜんぜん動いてくれない…。
それどころか腰が抜けてしまいそうなくらいに脱力しちゃって、それを支えてくる大嫌いな手。
「あれ?…感じてんのお前」
「……っ、」
なんていうか、こわい。
この人……すごく怖い……。
ぐっとこぶしを握ったとしても胸の前で押さえるだけで精一杯。
何ひとつ反抗も抵抗もできない、こんなのされるがままのお人形さんだ…。
「っ、やだ、…こわい……っ、」
「あー泣いちゃった、うっそ、」
「っ、さ、さわらないで……っ」
「やっぱりどんなに威勢張っててもお嬢様だねぇ。怖がらせた?ごめんごめん」
ほら、そうやって簡単に謝れちゃうのも怖い。
わたしが想像もできないようなものをたくさん知っていて、それでいつかわたしにもさせようとしている目だ。



