俺の言うとおりにしてください、お嬢様。





わたしは地味にこの男に会うのは初めてだった。

お姉ちゃんの婚約者だということは少しだけ知っていたけど、でもわたしのポジションって柊家でも期待はされてなかったから。


ある意味自由で、庶民的な生活をしていて。

でもお姉ちゃんが事故に遭ってから彼女の代わりを担う羽目になっちゃって…。



「アリサは?治る見込みあんの?」



掴まれていたほっぺたは解放された。

ぷはっと反応してみても、そいつは気にする素振りすらせずにお構い無しらしい。


それにお姉ちゃんのこと、実はわたしもそこまで詳しくは知らなくて。



「……わかんない」



だからわたしが代わりに生活している毎日だ。ただ柊財閥と早乙女財閥を繋げるためだけに。

お願いお姉ちゃん、できれば早めに戻ってきて……。



「じゃあ半分はお前と決まってるようなものってことか。うっわ、最悪」


「なっ!嫌ならやめればいいじゃん!やめてくれていいよ!!わたしだってそっちのほうが嬉しいっ」


「それは無理。柊とうちを繋げろって父親からも言われてんだよ俺も」



御曹司やセレブにも家庭の事情というものは必ずあって。

自由な恋愛ができないことは可哀想だなって少しだけ思っちゃった。