定期入れは、恐らく二人で買ったものだろう。

 高校生になって、同じ区間の定期をその定期入れに入れて電車で通うほほえましい二人の姿を想像した。

 だけど、その定期入れを強く握りしめた痕跡に、電車に乗って舞花のもとに向かうあおい君の姿とその胸の内を想像して苦しくなった。

 僕だってこう見えて、人を慰めたり、その人の心に寄り添ったりできるほど、気持ちに余裕があるわけではなかった。

 だけど、僕はあおい君のそばから離れられなかった。

 誰かにそばにいてほしかったのかもしれない。

 誰かのそばにいたかったのかもしれない。
 
 それが、あおい君だったから……。


 舞花の好きになった人。

 舞花を好きになった人。


 そんなあおい君のそばに、僕はいたかったのかもしれない。

 あおい君のそばにいると、舞花を感じられるような、そんな不思議な気持ちがしたから。

 だから僕は、いつまでも、あおい君のそばにいた。