一目惚れをして以来、1度も彼に会えていない。


それはまさしく、この学校がもたらす恐怖とも言える生徒数の多さが原因だ。


各学年がそれぞれ10クラスずつあって、そのせいで同じ学年だって知らない顔の方が多い。



私の恋のお相手が同級生なのか、それとも2年生なのか、はたまた3年生なのか。


なんにも情報が手に入らないまま、5月が終わろうとしていた。


フワって揺れる髪の毛を探して、柔らかく笑う横顔を探して。


休み時間も放課後も、1年3組の廊下の窓から見える渡り廊下をずーっと見張ったり、


移動教室ではきょろきょろと前後左右を確認したりした。


それでも全然会えないのは、もしかしたらクラスが遠すぎるのかもしれない。


この学校は校舎が2つに分かれていて、右の校舎と左の校舎を繋ぐように真ん中に渡り廊下がある。


教室自体が1組から5組までが右、6組から10組までが左にあって、私は1年3組だから右側の校舎で過ごすことがほとんど。


もし彼が左の校舎なら、会うことは滅多にないと思う。


共同で使う移動教室か、渡り廊下のすぐ横にある学食くらいでしか会うチャンスはない。


会いたいのに全然会えない……

会えないと、好きって気持ちがどんどん膨らんでいって、胸が爆発しちゃいそう。



言葉なんて交わせなくていい。

一目会えれば、私はそれだけで満足だから……