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それから陽翔が『ボディ&ケア』の秘書としてやって来て、現在に至るのだが……。今日も俺は胃薬を片手に仕事をこなしていた。
それというのも思いが通じた二人が、社長室でイチャイチャしているためだった。
「陽翔さん、そろそろ自分の会社に戻られたらどうですか?」
磯田はイライラと苛立つ感情を隠すことなく、陽翔と千夏にぶつける。
「そっ……そうよ。陽翔は自分の会社に戻った方が良いわ。社員さん達が悲鳴上げているって言ってたわよ」
「えー。戻ったら千夏さんと一緒にいられなくなっちゃう。寂しいよ」
上目遣いで社長をみつめる陽翔にため息が出る。社長はその顔にコロッとだまされているようだが、端から見ると腹黒さが滲み出いる。
「ともかく、仕事はきちんとしてください」
「「はーい」」
二人の呑気な返事を聞き、また胃が痛くなる磯田だった。
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早く帰りたい。
磯田はその一心で仕事をこなし、アパートへと急いだ。鍵を使い中に入るとキッチンの方から良い匂いが漂ってきた。
「あっ、駈お帰り」
笑顔で出迎えてくれたのは恋人である拓人だ。
この笑顔マジで癒やされる。陽翔とは従兄弟にあたるため、兄弟のようによく似てはいるが全く違う。腹黒さなんて全く感じ無い。磯田は拓人に抱きつき深呼吸を繰り返した。
ああ、疲れた。癒やされる。
磯田は拓人の首に両腕を巻き付け、すり寄った。
「あれれ?駈どうしたの?今日は甘えん坊の日?」
「……うん」
素直にそう答えると、口元を押さえた拓人が頬を染めた。
「うわー。いつもクールなくせにデレると可愛いとか、めちゃくちゃそそられる」
拓人は磯田の腰に手を添えるとゆっくりと動かした。
「駈……我慢できない」
拓人は磯田の唇を自分の唇でふさいだ。
チュッチュッと部屋にリップ音が響き、二人の舌が絡み合う。拓人は磯田の唇と舌を堪能すると、耳を食み、首筋へと舌を這わせていく。
「……んぁ……拓人、俺……シャワー浴びてない……んっ……汚い……」
「駈に汚い所なんてないよ」
「拓人……俺……はぁっ……んっ……」
「可愛い。駈、可愛すぎる」
拓人は磯田をこれでもかと言うほど可愛がった。
磯田には今後も沢山の困難が訪れるだろう。しかし、こうして癒やしてくれる恋人が近くにいることは磯田にとって幸運だった。
「拓人……愛してる」
「俺も愛してるよ」
食事も摂らずに二人は熱い時間を過ごすのであった。
* FIN *