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「はぁー。やっと帰りましたね」

 そう言ったのは陽翔だった。

「ホント、やっと帰ってくれたわね。……すっごく疲れたわ」

 二人はソファーに身体を預けながら、肩を寄せ合った。それから何も喋らず、時間だけが過ぎていったのだが、何も気にならなかった。

 居心地が良い。

 この人の隣はなんて居心地が良いのだろう。

 幸せに思いながら、千夏が目を瞑っていると、隣から陽翔が呟いた。

「千夏さんごめんね……」

 ???

 陽翔が何を謝っているのか分からず、千夏は首を傾げた。

「千夏さんにプロポーズの言葉、言わせちゃって」

 ああ、そのこと……。

「それなら私の方こそ、ごめんなさい。両親がいる前であんなこと言っちゃって」

「それは良いんだけど……俺からも言わせて欲しいんだ」

 そう言った陽翔の真剣な表情に息を呑む。

 これは……。

「千夏さん、俺と結婚して下さい」

 プロポーズ……。

 ホントに……?

「陽翔、私……陽翔が言うほど可愛げ無いわよ。これから幻滅することの方が多いかも……私のこと手放したくなるかも……」

「そんな事無い。こんなに頑張り屋の可愛い子、手放さないよ」

 私を可愛いなんて言ってくれるのは、陽翔ぐらいだ。

「ホントに私で良いの?」

「うん。千夏さんが良い。千夏さんじゃなきゃ嫌だ」

 陽翔は千夏を強く抱きしめた。自分の気持ちが千夏に届けとばかりにきつく抱きしめる。

「千夏さんをもう一人にはさせない。好きだ。愛してる。これから先もずっと俺の側にいて欲しい」



 一人にはさせない……。

 陽翔の言葉に千夏の瞳から涙が溢れ出した。

 今まで『お前は一人でも大丈夫だろう』と振られ続けた私が、初めて言われた言葉。

 千夏の瞳から止めどなく流れる涙に陽翔は戸惑いいながら、手を使ってその涙を拭った。その手つきに陽翔の優しさを感じる。

「陽翔ありがとう。私も陽翔が大好き。さっきも言ったけど、お嫁さんに来て下さい」

 千夏はとびっきりの笑顔で陽翔に答えた。

 すると陽翔の口からくぐもった、「ぅぐっ」という声が聞こえてきた。

「うっわ。可愛すぎる」


 この後、陽翔が千夏を押し倒し、甘い時間を過ごしたことは、ここで私が説明しなくても読者の皆様ならわかっていただけるでしょうか?







           
         * FIN *