「それにしても、まさか千夏さん振って傷つけたやつが、自分の部下だったのには驚いたよ。先入観だけで物事を見ているから痛い目を見るんだ。俺のこと子供子供って、あいつクビにしてやろうかな?」
「ええー。それは職権乱用なんじゃ……」
「なんで?千夏さんをあんなに傷つけて泣かせて、許せないじゃん。それによく考えてみて、振られた日に女と歩いてたって事は千夏さん二股かけられてたって事だからね」
「それはそうだけど、クビって言うのはちょっと……。私の事を思って言ってくれているのはわかるけど、それ陽翔の感情だけで動いてるよね。やっぱり職権乱用じゃない」
でも……私のために怒ってくれているのよね。
千夏は頬を染め、フフッと笑った。
「陽翔ありがとう。そうやって怒ってくれるだけで嬉しい」
千夏は陽翔のスーツの裾をグイッと引っ張り、陽翔の唇にチュッとキスをした。
すると、目を丸くした陽翔が後ろへ撫で付けていた髪をガシガシと乱暴に乱し、いつもの状態に戻すと、嬉しそうに微笑んだ。
陽翔の笑った顔、好きだな。
可愛い。
「はぁー。年下は趣味じゃなかったのになー」
ポツリと呟いた千夏に陽翔が口角を上げ、いたずらっ子のような顔をして笑った。
「あれ、千夏さん言ってませんでしたっけ?俺、千夏さんより4つ年上だよ」
「…………」
えっ……?!
「えーーーー!!!!嘘でしょう。こんなに童顔なのに4つも年上なの!」
「あはは。千夏さんは驚いた顔もかわいい」
「信じられない。こんな甘えん坊な年上って……」
「ん?甘えん坊なのは千夏さんの前だけですよ」
陽翔は千夏を抱き寄せると、唇をふさいだ。それはとても甘く、とろけるようなキスで千夏の腰が砕けるほど甘かった。
「千夏さんもう分かってると思うけど、俺から離れられないから覚悟してね」
「……はい」
頷いた千夏を陽翔は両腕で包み込むと、愛おしそうに抱きしめたのだった。