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 ソファーに座り千夏と陽翔はまったりとした時間を過ごしていた。なぜか今日は仕事がはかどり、いつもより早く帰ってくることが出来たため、こうして部屋で過ごすこととなったのだが……。

 陽翔が事あるごとに「かわいい」を連発してくる。

 食べてる姿がかわいい。

 笑った顔がかわいい。

 赤くなった顔がかわいい。

 泣いてる顔もかわいい。


 こんな私のどこがかわいいと言うのか全く分からない。千夏は首を傾げながら陽翔を見つめた。すると……。

「うわっ!またそういう……首傾げながら見つめるとか反則だから」

 フッと横を向き口元を押さえる陽翔の耳が赤く染まっている。かわいいのは絶対陽翔の方だ。千夏は陽翔の頭を抱きかかえるように引き寄せると赤く染まった耳にキスをした。

「陽翔かわいい」

 かわいい、愛おしい、男性に対してこんな感情が芽生える日か来るなんて。過去の自分が見たら驚愕することだろう。
 

 今までの薄っぺらい恋愛はなんだったのだろうか?と思うほど一人の男性を思っている自分がいる。陽翔はよく私を離さないと言うが、離れる気なんて全く無い。むしろ私が離れられない。

「千夏さん……」

 千夏に抱きしめられたままじっとしていた陽翔が千夏を押し倒した。

「もう我慢できない」 

 そう言った陽翔の熱を帯びた視線に千夏は息を呑む。こうなった時の陽翔は止められないと千夏は最近分かってきた。それに千夏自身も陽翔を拒む理由も無い、むしろ陽翔を受け入れたいと思っている。

「いいよ。きて陽翔……」


 二人の甘い吐息が部屋に響いた。