その時、廊下では磯田と陽翔がヒソヒソと話を交わしていた。
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「陽翔さんいい加減、自分の居場所に帰った方が良いのではありませんか?お父様の方は大丈夫なんですか?」
「ああー。あっちの方は大丈夫だよ。父さんがうまくやってるみたいだし。案外俺がいなくても大丈夫そうだから、このままここにいようかな?」
「そんなわけにいかないでしょう。自分の立場を考えて下さい」
そんな話をしながら磯田は腹部を押さえた。やけに胃がキリキリと痛む。
こんな話を誰かに聞かれるわけにはいかない。
これは私と陽翔さん、そしてもう一人の人物との秘密。
トップシークレット。
特に社長に知られるわけにはいかない。
ああ、ダメだ胃薬を飲もう。
早く帰ってあいつ……恋人とイチャつきたい。
そのためにはさっさと仕事を終わらせて帰る。そして目の前にいる陽翔さんのやる気を出させなければ……。
「陽翔さん、さっさと仕事終わらせないと社長とのラブラブな時間が減りますよ」
すると陽翔の瞳がキラリと光ったような気がした。
「磯田行くぞ」
二人の立場が逆転したかの様な口ぶりだが、磯田は何も気にした様子も無く、仕事に取りかかったのだった。