千夏は酸素を吸い込むと覚悟を決めた。

「陽翔くんが大切なの。私は陽翔くんのこと……」


 最後まで話し終わる前に、千夏の身体は陽翔の腕の中に閉じ込められた。そして千夏の頭上から響いてきた言葉に身体を強ばらせ、言葉を失う。


「ごめん……」


 えっ……ごめんて……。

 私は自分の気持ちに気づいたその日に失恋するのか。

 そうよね。

 私と陽翔くんとじゃ年が離れすぎているし、釣り合わない。もっと可愛い子の方が良いに決まっている。

 鼻の奥がツンと痛くなった。

 泣くな……。

 泣いてはダメよ。陽翔くんを困らせてしまう。

 そう思っていても、瞳に集まり出した涙を止められない。それを陽翔に気づかれないように深呼吸を繰り返す。

 ダメ……涙がこぼれてしまう。

 ぐっと唇に力を入れたその時、陽翔の唇が千夏の唇をふさいだ。

「千夏さん……」

 そう囁きながら陽翔の舌が千夏の口腔内をまさぐっていく。

 どうして……今ごめんて言ったのに、どうしてこんなキスを?

 陽翔の熱い吐息が千夏の身体を熱くさせる。

「こんなに大切なこと千夏さんの口から言わせられない……好きだよ」


 どういうこと?

 今、好きって……好きだよって聞こえた。

 幻聴ではない?

 潤んだ瞳のまま陽翔を見上げると、陽翔の目が泳いだ。

「そんな瞳でこっち見ないで、止められなくなる。好きだ……好きだよ」

 そう言って陽翔がチュッチュッとついばむようなキスを二回落とす。

「……っん……陽翔くんは私が好きなの?」

「うん。すっごく好きだよ。伝わってなかった?」


 伝わってなかったよ……。

 いや、伝わっていた。伝わっていたのに、私は陽翔くんの思いを無理矢理にねじ曲げて、年下だからと心に蓋をしていた。

 
 私はずっと、陽翔くんに引かれていたというのに……。

 ずっと素直になれなかった。

 でも今なら素直になれる。

 陽翔くんがその思いを、何度も伝えてくれたから。

 千夏の瞳からポロポロと涙が溢れ出した。陽翔は千夏の頬を滑り落ちていく涙に口づけを落としていく。チュッチュッとあふれ出てくる涙を陽翔は嬉しそうに口づけるも、涙が止まる気配が無い。

「そんなに泣かないで、千夏さんの口からも聞きたいな……千夏さんの気持ち」



 千夏は涙と共に溢れ出す思いを、素直な気持ちを言葉にした。




「好き……私も陽翔くんが好き」





 千夏が自分の気持ちを素直に打ち明けると、陽翔が破顔した。

「もう千夏さんは俺のだからね」

「うん」

「これからは俺のこと陽翔って呼んでよ」

「えっと……はる……陽翔?」

「何で疑問形?まあいいや。かわいいから」

 そう言うと陽翔はまた嬉しそうに顔を近づけてきた。

「陽翔大好き」

 二人の唇が触れようとした瞬間、千夏が囁くように「陽翔大好き」と呟いた。すると陽翔がそれに反応し動きを止めた。千夏は突然固まったまま動かない陽翔を心配して話しかけようとしたその時、唸るような陽翔の声が聞こえてきた。

「お願いだからそうやって煽るの辞めて……またそういう顔して」

 うるうると潤んだ泣き笑いの千夏の唇に陽翔の唇が触れる。今までのキスとは違う甘いキスに
千夏の口から吐息が漏れる。

 気持ちいい……。

 陽翔の舌が自分の舌と絡み合い、ピチャピチャと水音が響く。あまりの気持ちよさに息が荒くなり
身体の芯が熱くなっていくのを感じる。身体から力が抜け立っているのがやっとの状態で千夏は陽翔にすがりつく。

「はんっ……陽翔……んっ……陽翔……」

 千夏がかわいらっしく何度も陽翔の名前を呼ぶと、陽翔は我慢できないとばかりに千夏の服を乱暴に脱がしていった。

 露わになっていく白く柔らかい千夏の身体。その至る所に陽翔は唇を押し当てると千夏の白い肌に赤い花びらが咲き誇る。

「綺麗だ……」

 陽翔の熱い指先が千夏の身体を撫でていく。千夏は陽翔の手によってトロトロにされ、最後には陽翔自身を受け止めた。


 思いが通じ合った二人は時間も忘れて求め合った。