「いやーー!!何なの何であんな恥を晒さなくちゃいけないわけ。会社の宣伝になったのは良いとして、しばらく外歩けないわよ」

「ええー、どうしてですか?昨日の千夏さん可愛かったですよ。テレビ局の編集さん良い仕事してくれました。俺、録画して赤くなる千夏さんを何度も見ちゃいました」


 録画……。


「陽翔くん、家に帰ったらすぐにその録画消してちょうだい」

「ええー、嫌ですよ。絶対消しません」


  これは絶対消す気ないわね。どうしたら消してくれるかしら。


「どうしても消したいなら千夏さんが直接消しに来ますか?俺、部屋で待ってますから」

 そう言ってニッコリと微笑む陽翔。


 くぅー。

 可愛い顔して笑ってくれるわね。


 そこで「おほんっ」とわざとらしい咳払いが磯田の方から聞こえてきた。


「あまり会社でイチャつかないで下さい。他の社員の目もありますから」

「いいいいっ……イチャついてなんかいないわよ」


「そんなことより、社内でも『あんな社長の姿見たこと無い、親近感が湧くー』と社員達が騒いでいましたよ」

「えっ、そうなの?みんな幻滅したんじゃないの?」

「それは無いようですよ。みんなあの放送のおかげでやる気に満ちている様子です」



 そうなのか?

 とりあえず、恥は書いたが会社のためになったのなら、今回の密着は大成功なのだろう。


 なんてことを思っていたとき、一本のメールが届いた。スマホの画面に表示されたのは……。




 村上達哉の文字。






「……達哉」