琥珀の月に照らされたアスファルトの上を千夏と陽翔は歩いていた。スーパーから千夏のマンションまでは徒歩でも10分かからないため、歩いて帰ることにしのだ。所々に建っている街頭の明かりと、月明かりのおかげで足下を気にすること無く歩くことが出来たため、思ったより早くマンションに着くことが出来た。

「千夏さん夕飯の準備しておくのでシャワー浴びてきて下さい」

「でも……私も手伝うわよ」

「大丈夫ですから、ほら行ってきて下さい」

 千夏は陽翔に背中を押されシャワールームへと向かった。

 あっ、そうだ如月ホテルに出す試作のアメニティのセットを試して欲しいって開発部のスタッフに言われてたんだ。

 千夏はアメニティをもって浴室に入り、アメニティを並べた。左から順番にシャンプーとコンディショナー、ボディソープ、化粧水、乳液と並べていった。今はとりあえずこれだけで今後は、今日会社で考えていた案を取り入れていくつもりだ。

 
 千夏はまず、ロングの髪でも二回分は余裕で使える量が入っているシャンプーの小瓶を手に取り、手のひらにたらした。シャンプーを手のひらで泡立てると女性らしいフローラルの香りがしてきた。如月ホテルは多くのホテルを経営している大手のため、大人の女性をイメージしてあまり甘すぎない香りにした。

 うん。この香りで大正解。

 さすがは、うちの開発部ね。シャンプーの泡立ちも最高。コンディショナーも髪の指通りが良くなっているのが分かるし、ボディソープもきめ細かい泡が立ちやすく、シャワーで洗い流してもしっとりとしている。

 これなら合格だわ。後はこの他に何を入れるか……。ボディクリームやパックを入れるのも良いかも……。年齢層に会わせたアメニティっていうのもありかな……。宿泊して人に選んでもらうとか?

 あーダメダメまた仕事モードになっちゃう。

 千夏は頭を乾かしながら、仕事のことは一旦忘れることにした。