それから二人はタクシーに乗り込み、千夏のマンションへと向かった。その途中でタクシー運転手に声をかけ、近くにあるスーパーの前で降ろしてもらい、二人は閉店間際のスーパーに滑り込んだ。陽翔は急ぎ足でカゴに食材を入れていき、その後を千夏は付いて行った。

「千夏さんはバナナ以外に嫌いな物ってありましたか?」

「んー……特に無いわね」

 あれ?

 バナナが苦手なこと陽翔くんに話したことあったかしら?愛や磯田くんにでも聞いたのかな?

 首を捻る千夏に、鼻歌でも出そうなほど楽しそうに食材を選ぶ陽翔。

 すごく楽しそう。

 動物ならフリフリ尻尾を動かしているに違いない。

「今日は簡単に出来るパスタで良いですか?」

 楽しそうに料理を決めていた陽翔が声をかけてきた。

 パスタか……。

「パスタなら……」

 そこで言葉を止めてしまった千夏を、陽翔は不安げに見つめた。

「今日はパスタの気分では無かったですか?」

「えっと、その……」

「言って下さい。千夏さん」

 陽翔にそう言われ、少し顔を伏せた千夏がボソリと呟いた。

「ナポリタンが食べたい」



「……えっ」

 陽翔の口から驚きの声が出た。そのせいで、少し伏せていた千夏の顔が見る見るうちに赤く染まっていく。

「千夏さんナポリタンが好きなんですか?」

 言葉は発さずに、コクリと頷く千夏。そんな千夏の姿に陽翔は体がワナワナと震え出す。

 陽翔くん震えてる?

 ナポリタンが食べたいなんて、子供っぽくて笑っているのかしら?

 恥ずかしい。カルボナーラとか、ジェノベーゼとか言えば良かったかな。

 チラリと顔を上げると、それに気づいた陽翔が、それはそれは嬉しそうに笑っていた。その笑顔に胸がキュンッと締め付けられ、体が熱くなる。


 陽翔くんの無防備な笑顔、かわいすぎる!!

 可愛いは正義ってホントだ。