千夏は陽翔からの視線を逸らし、残っているピザをほおばった。するとピザのソースが口の端に付いてしまい、ティッシュを使って口元を拭おうとしたところで、その手を陽翔に掴まれてしまった。驚く千夏の手を握りしめたまま、陽翔が千夏の顔に近づいてきた。
ペロリ。
柔らかい何かが千夏の唇に触れ、目を見開き固まる千夏の目の前で、陽翔が自分の唇をペロッと舐めとった。
「うん。自分で言うのもなんだけど、このピザソースうまく出来た」
なっ……舐められたーーーー!!!!
驚きバクバクと動き出した心臓のせいなのか、身体中を血が駆け巡り、全身を熱くさせる。身体が熱くなると、今度は胸が締め付けられ、息を吸うのも苦しくなった。
苦しい……。
ハクハクと呼吸をくり返すと瞳に涙が溜まっていく。千夏は自分の胸を鷲掴みにしながら陽翔を潤んだ瞳で見上げた。
すると、陽翔が熱を帯びた瞳でこちらを見つめていた。
「そういう顔たまらないからやめて」
ぷいっと顔を逸らした陽翔の耳が赤くなっている。
そういう顔って?
言っている意味が分からない。
首を傾げる千夏の唇をもう一度、陽翔が舐めた。
「なっ……何で舐めるの!!」
「美味しそうだったから」
そう言いながら陽翔は千夏の唇を食むようにキスを始めた。陽翔と自分の唇の間で濫(みだ)りがわしいリップ音が響く。
ストップ……ストップ、ストップ。
言葉にならない声が脳裏に響いた時には、千夏の唇は陽翔にカプリ、カプリと食べられていた。
「んっ……んん゛っ……」
唇を食べられ続けていた千夏が、くぐもった声を上げると陽翔がやっと唇を離してくれた。千夏は酸素を吸うため赤く色づいた唇を開く。すると待ってましたとばかりに陽翔の舌が千夏の口内に侵入してきた。
「あっ……んっ……んん」
更に激しくなる口づけに、千夏の口から甘い声が漏れ出してしまう。身体の芯がしびれるようなキスはとても甘美で千夏の舌は、もっと、もっとと陽翔の舌を追いかけてしまう。
一通り千夏を食べ尽くした陽翔が唇を離した時には千夏は腰砕けになり、机の上に身体を突っ伏していた。そんな千夏を満足そうに見つめ陽翔が自分の唇を舌で舐め取る。
「ごちそうさま」
そう言った陽翔の顔がいつもの可愛らしい顔ではなく、獲物を捕らえる肉食獣の様な顔をしていたことに、机に突っ伏したままの千夏は気づくことはなかった。