それから陽翔は毎週金曜日の夜にやって来た。

 そして本日も……。

 テーブルの向こう側で両肘を付き、両手を頬に当てながら、私が食事を食べるのを楽しそうに見つめる陽翔の姿があった。

「あの……陽翔くん、そんなに見られていると食べにくいのだけれど」

「俺のことは気にしないで下さい」

 いや、気になるだろう。

 そんなに私のことを見ていて何が楽しいのか?

 千夏はテーブルの上に置かれた出来たてのピザに手を伸ばす。それを口に運ぶと口いっぱいにトマトの酸味と、バジルの爽やかさ、それにチーズのうまみが口いっぱいに広がった。チーズのとろけ具合も最高で、千夏が食べた口と、ピザとの間に美味しそうなチーズの糸を引く。

「うわ!!何これ美味しい」

「ホント?良かった。生地の厚さは大丈夫でしたか?」

「え?このピザ、生地から作ったの?」

「はい。以外と簡単にできるんですよ」

 ……すごい。

 この子、何でもできるのね。

「陽翔くんは将来、料理の道とかに進みたいの?」

 陽翔はそれを聞いて少し困った様な顔をした。

 ?

 どうしたのかしら?

「あー、僕は……千夏さんと約束しましたし、強いて言えば千夏さんのお嫁さんになりたいかな」


 へっ……。

 約束?


 確かにこんな可愛い子が嫁に来てくれれば幸せだろう。帰って来たら美味しいご飯が出来ていて、お風呂の準備や綺麗に掃除された部屋……最高じゃないか。

 っ……って、それって男の考え方じゃないのか?

 私はいつから男になったんだ。


「いや……、いやいやいや……お嫁さんて」

「ダメなの?」

 瞳を潤ませ首を傾げる陽翔の姿に、胸がキュンキュンと締め付けられる。

 かっ……かわいい。

 抱きしめたい。

 
 そんな思いがこみ上げてくる。

 ダメよ。千夏、何を考えているの?

 また陽翔を襲う気なの?

 今まで年下には興味は無かったはずでしょう。

 しっかりしなさい。