会社でのわたしたちは隙を見せないように気をつけていた。誰がどこから見ているか分からないし、彼は順調に出世コースを歩んでいる人だから、オフィスでの危ないラブアフェアなどという足を掬われるような真似は嫌った。

 六つ年上の彼はわたしが入社した時にはすでに管理職のポストに付いており、いわゆる将来を期待された優秀なエリート。幼稚園に通っている可愛らしい娘さんがいて、仕事の書類をご自宅に届けるという役目を仰せつかった時に会ったことがある。初対面なのに、無邪気に、お姉ちゃんと舌足らずな喋り方で懐いてくれた。