倉庫を出るとこらえたはずの涙があふれ出てきた。

「あ…れ…?」

なんで…かな…。

ちょっと冷たくされただけなのに…

ズキズキして苦しいよ…。

私は足に力が入らなくてしゃがんだ。

「時雨くん…」

泣いて名前を呼んでも時雨くんが私の所に来てくれることはなかった。

私がしゃがんで泣いていると走って誰かがこっちに来る音が聞こえた。

「真彩ちゃん!」

顔を上げると瑠斗さんが汗だくで私に向かって走ってきていた。

「瑠斗…さん…」

「よかったっ!無事だった…」

瑠斗さんは私に走った勢いを止めることなく抱き締めてきた。

「る…と…さん?」

なんでここに?

「本当に…心配したんだよ。」

表情はよく分からないけど体が震えていた。

きっと…一生懸命探してくれたのかな。

心配させちゃったな…。

「瑠斗さん、ありがとうございます。」

私は瑠斗さんを抱き締め返した。

その時、ポツッと私の頬に水が当たった。

あ…雨だ。

私は少しだけ天気に感謝した。

よかった…瑠斗さんに泣いてるってバレないや。

私はこっそりバレないように涙を流した。

なんで…時雨くんを好きになったのかな?

瑠斗さんがいるのに…どうして婚約者の瑠斗さんを…好きになれなかったのかな。

きっと自分の気持ちが邪魔になる。

大切にしたいのに…。

簡単に婚約なんてするんじゃなかったな…。

私は過去の行動を反省した。

これから…どうすればいいの?

時雨くんが好き。だけどきっと片想い。それでもいい。想っていたい。でも、私には瑠斗さんと言う婚約者がいる。

私が…やらないといけないことは…。

「瑠斗さん……私、瑠斗さんが婚約者で良かったです。」

自分の気持ちに蓋をすること。


「これからも…よろしくお願いします。」