バンッと大きな音が鳴って入ってきたのは…


「し…ぐれくんっ……。」


時雨君だった。

「…そこの女。真彩から手を離せ。」


時雨くんは白鷺さんに低い声で言った。

すると白鷺さんはビクッと肩を揺らして私の首から手を離した。

「ごほっ!」

息が吸える…怖かった……。

時雨君の方を見ると梅雨くんと睨み合っていた。

「久しぶりだね時雨。」

梅雨くんが話しかけても時雨くんは睨み付けるだけだった。


「そんなに睨まないでよ。俺らの仲だろ?」

「俺にはお前と仲良くした記憶なんてない。」

二人は…仲が悪いのかな?

そんなことをボーッと思っていると時雨くんと目が合った。

私の胸はどくんと大きく高鳴る。

っ…自覚する前はこんなことなかったのになぁ。

時雨君は私の方に来ると顔をゆがませた。

「…悪い。もっと早く来れなくて。」

「っ!?な、なんで?来てくれただけでも嬉しいよ!」

「…それでも…真彩だけはこんな風に傷つけたくなかった。」

そんなに…思ってくれてたの?

私は嬉しいのと恥ずかしいので胸が苦しかった。

時雨くんはズボンのポケットから折りたたみナイフを取り、私の腕と足に結ばれている縄を切ってくれた。

あ…縄の跡ついちゃった。

腕と足に付いた跡は痛々しかった。


「…ごめんな。」

「すぐ直るから安心して。ね?」

私がそう言って微笑むと時雨くんは少しだけ微笑み返してくれた。

ちゃんと…この気持ち伝えたいな。

瑠斗(婚約者)がいるのにこんなことを思ってしまうのはダメなのかな?


私はまた梅雨くんと睨み合う時雨くんを見つめながらそう思っていた。