駅前に来ると、新しいパンケーキ屋さんの前には行列ができていた。

「ね、ダン。あれに並ぶの?」

私はこの夢の国のアトラクション並みに時間がかかりそうな列を指してダンに聞いてみた。

「ん? だってユズ、パンケーキ食べたいんでしょ?」

「うん、食べたいんだけどさ」

「じゃ、並ぶよ。おいで」

ダンが列の最後尾に並んだから、私も隣にいるしかなくて。

この待っている時間にダンと何を話せばいいのか考え付かない。

もし無言になってしまったら気まずいよ。

しかもよく考えたら、ダンと向かい合ってパンケーキを食べるの?

なんだか恋人同士みたいじゃない。

「いや、恋人同士みたいじゃなくて、恋人同士だろ、俺たち」

「また心の声が出てた? 恥ずかしい」

「ユズは色々考えすぎ」

「色々考えない訳ないじゃん! 考えちゃうよ。だってダンが彼氏ってさ。もし、お店の中に同じ学校の子がいて、見られたら噂になるよ。そんなの、ダン嫌でしょ?」

「全然。なにそれ?」

「それに。もしも、だよ。ダンが告白されてお断りした人とかにどう思われる? その人、悲しまない?」

「ユズ、なんか知ってんの?」

「しっ、知らないよ。何も知らない! ダンが告られてたのなんて、知らないもん」

「ユズ、何か知ってるな? おい、白状しろ!」