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気が付けば外はじわじわと暑さが増して、いよいよ夏本番になってきた。


額に滲んだ汗を拭いながらいつもの喫茶店のドアを開くと、ふわりとクーラーの効いた空気があたしを包んだ。


「あー……涼し……」

「うわ、汗だくじゃん。おばさん5割増」

「…開口一番それかい」


絢くんがバイトを始めて早1ヶ月が過ぎた。

相変わらず出会った時のままの生意気なガキのまま、絢くんは今日もひたすらにモテていた。


「絢くーんっ、コーヒーおかわり下さ〜い」


語尾にハートマークがつきそうなほど甘い声を出したのは、週に2回くらい来ている絢くん目当ての若い女の子。


そんな声に絢くんが小さく舌打ちをしたのをあたしは聞き逃さなかった。


今日はこの王子様、ご機嫌ナナメらしい。