「起きて〜!」
寝ている私の耳元で誰かの声が聞こえる。
「もうちょっと……」
「こら!」
「あと、ちょっと…」
「起きないと僕がキスするよ」
「ふぇ?!」
私は飛び起きた。
目の前には微笑む楓くん。
あぁ、そうか。
お母さん達、居ないんだっけ。
いつもはお母さんが起こしてくれるけど、今日は楓くんが起こしてくれたんだ。
「楓くん、ありがとう」
「朝ご飯出来てるから下、降りてきてね」
エプロン姿の楓くんが一階におりていく。
私、今日から楓くんと過ごすんだ。
私は布団に包まった。
今更、実感が湧く。
楓くんと再会できたてしかも、一緒に過ごせること。
嬉しい。
だけど……
楓くんは学校の王子様。
一緒に住んでいることがバレたら絶対に終わる。
バレないようにしないと。
クローゼットから制服を取り出して着る。
髪型はいつものひとつ結び。
休日はおろしてるんだけどね。
私はいつも鏡で自分の姿をチェックする。
今日は入念にする。
初日から私のダメダメな姿を見せるなんて絶対に嫌だから。
「よしっ!」
一階に向かうと、朝ご飯の美味しい匂いがする。
「楓くん、料理出来るんだ。すごい」
ダイニングテーブルの上には黄色いだし巻き卵、湯気の出ている味噌汁、ホカホカのご飯。
「いただきます!」
朝ごはんを口に入れると、色んな食材の風味が口に広がる。
「風菜、おいしい?」
私の様子を伺う楓くん。
私は首をブンブン縦に振って
「めちゃくちゃ、美味しい」
と言った。
すると楓くんは『良かった』と言って自分のご飯を食べ始めた。
「そういえば、風菜。今日図書委員の話し合いの日じゃない?」
私は図書委員会に入っている。
図書委員は週一回の朝に話し合いとかをしている。
話し合いは大体、八時に始まるから…
時計を見ると針が七時四十分を指していた。
「あ、やばっ!!」
私は朝ご飯を急いで食べた。
そしてカバンを持ち
「いってきます〜!」
そう言って家を出た。