そして次は下り坂を下る。
涼しい風がふく。
風が吹くと道に植わっている木とかが音をたてる。
私はそれを楽しみながら下り坂を下り、家につくと家の庭に自転車を置く。
そしていつものように
「ただいまー!」
そう言って玄関を開ける。
すると、いつものようにお母さんが…
「おかえり、風菜」
迎えて……
「……王子……」
私はかすれた声で呟いた。
本当に驚いて声が出なかった。
私を玄関で迎えたのはお母さんでもお父さんでもない。
学校で『王子様』と呼ばれている男子だった。
「風菜、おかえり」
玄関に立ち止まって微動だにしない私を見て王子、今度は私に向かって手を振っている。
「……た、だいま?」
私は一瞬、家を間違えたのかと思った。
だけど、靴箱の植に置いてある置き時計、傘立て、飾っているお花。
それは今日の朝、見たまんまだった。
じゃあ、なんで王子がいるの?
「あの……なん
王子に恐る恐る尋ねようとするとお母さんがやってきて
「風菜、おかえり。
今から話があるから、ちょっと来てくれる?」
そう言った。
話…?
お母さんから私に送られたメールの話と同じことだろうか?
「楓くんと風菜、リビングに来て」
お母さんはどんどん玄関とリビングを繋ぐ廊下を歩いて行く。
私は目の前になぜ、王子が居るのか?
なぜ、王子のことをお母さんが知っているのか?
分からないことだらけだったけど、とりあえずお母さんについていくことにした。



