「笑美さんは先のことを、まったく考えていないんですね」
「先のこと?」
思いもつかないことを言った澄司さんのセリフに疑問を感じ、つっけんどんな物言いをしてしまった。
「佐々木さんはただの平社員です。今から頑張って役職についたとしても、たかが知れてる。でも僕なら、佐々木さん以上の地位が約束されています。金銭面では、笑美さんに苦労させたりしません」
「金銭面……」
(そういう考え方をする澄司さんが苦手ですって言ったら、この車内で逆上するかもしれない。だから絶対に口にしちゃいけないだろうな)
「それに僕のほうが佐々木さんよりも背が高いし、見た目だって上です。まぁ僕の父があんな頭なので、この顔でハゲちゃったら、カッコつかないですけどね」
気がついたら花束ごと、横から体を抱きしめられてしまった。
「笑美さんが好きです。愛してます。この想いは佐々木さんにだって負けない」
「こんなことをされても、私の気持ちは変わりません。諦めてください!」
ピシャリと言い放った私の言葉に、澄司さんはビクつきながら腕を放した。
「笑美さんすみませんでした。でも僕は諦めることができません……」
らしくないくらいに小さな声で告げられたセリフは、彼の自信のなさを表すようだった。それに導かれる感じで運転席を見たら、口元を押さえながら眉根を寄せる姿があり、今にも泣き出してしまいそうな様子に、あたふたしてしまう。
「わっ、私はなにがあっても、佐々木先輩がいいというか。澄司さんが諦めることができないと言っても、無駄なんですけど」
(なんで私が、こんなに気を遣わなきゃいけないんだろ。いいとこの坊ちゃん、撃たれ弱すぎ!)
「澄司さんだからその…えっと」
「すみませんでした。もう落ち着いたので大丈夫です。駅までお送りしますね」
頭を振ってから私に笑顔を見せた澄司さんはいつもどおりで、スムーズに運転をこなした。そして指定した駅で降ろしてもらって、あっさり解放される。気疲れしたそのあとは、ベッドにバタンキューだった。
「先のこと?」
思いもつかないことを言った澄司さんのセリフに疑問を感じ、つっけんどんな物言いをしてしまった。
「佐々木さんはただの平社員です。今から頑張って役職についたとしても、たかが知れてる。でも僕なら、佐々木さん以上の地位が約束されています。金銭面では、笑美さんに苦労させたりしません」
「金銭面……」
(そういう考え方をする澄司さんが苦手ですって言ったら、この車内で逆上するかもしれない。だから絶対に口にしちゃいけないだろうな)
「それに僕のほうが佐々木さんよりも背が高いし、見た目だって上です。まぁ僕の父があんな頭なので、この顔でハゲちゃったら、カッコつかないですけどね」
気がついたら花束ごと、横から体を抱きしめられてしまった。
「笑美さんが好きです。愛してます。この想いは佐々木さんにだって負けない」
「こんなことをされても、私の気持ちは変わりません。諦めてください!」
ピシャリと言い放った私の言葉に、澄司さんはビクつきながら腕を放した。
「笑美さんすみませんでした。でも僕は諦めることができません……」
らしくないくらいに小さな声で告げられたセリフは、彼の自信のなさを表すようだった。それに導かれる感じで運転席を見たら、口元を押さえながら眉根を寄せる姿があり、今にも泣き出してしまいそうな様子に、あたふたしてしまう。
「わっ、私はなにがあっても、佐々木先輩がいいというか。澄司さんが諦めることができないと言っても、無駄なんですけど」
(なんで私が、こんなに気を遣わなきゃいけないんだろ。いいとこの坊ちゃん、撃たれ弱すぎ!)
「澄司さんだからその…えっと」
「すみませんでした。もう落ち着いたので大丈夫です。駅までお送りしますね」
頭を振ってから私に笑顔を見せた澄司さんはいつもどおりで、スムーズに運転をこなした。そして指定した駅で降ろしてもらって、あっさり解放される。気疲れしたそのあとは、ベッドにバタンキューだった。



