恋の誘導尋問~恋に不器用な先輩に捕われたい~

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 佐々木先輩と無事にLINEで繋がることに成功したので、早速メッセージを送ってみる。

『お疲れ様です。これから帰ります。残業あまり無理しないでくださいね』

 打ち終えたのちに送信し、すぐにスマホをしまって、フロアをあとにした。

(今日は電車で帰らないで、下車する駅に車で送ってもらおう。澄司さんと顔を逢わせる時間と、手を繋いだりという直接的な接触を少しでも減らしたい)

 乗っているエレベーターが一階に到着したので、開閉ボタンを押して乗っていた人が出てから降りる。人混みの最後尾を歩いた瞬間に、すごい力で横に引っ張られた。

「!?」

 声を上げる間もなく引きずり込まれたのは、エレベーター横にある階段下の小さなスペースだった。

「間に合った……」

 頭上から聞こえた声に胸を熱くすると、私を抱きしめる大きな体から汗ばんだ熱気が、じわりと伝わってきた。

「佐々木先輩?」

 仰ぎ見る彼の姿は、だらしなくメガネがズリ落ち、額から汗が滲み出ていて、荒い呼吸を何度も繰り返す。普段との違いに、なんて声をかけていいのかわからず、息を飲んで見上げ続けた。

「悪い、日頃の運動不足がたたってる……。いっ、急いで階段を降りまくったせいで、息が切れてて、ぅ、うまく言葉にならない」

(さっき送ったLINEを見て、急いで追いかけて来てくれたんだ――)

「佐々木先輩、あの……」

「松尾の酸素、少しわけてくれ」

「んっ!」

 私の返事も聞かずに押しつけられた唇は、ちょっとだけカサついていた。その感触はすぐになくなり、角度を変えてふたたび押しつける。私を逃がさないようにするためなのか、佐々木先輩の大きな手が後頭部を支えた。やがて厚みのある舌が差しこまれ、感じさせるように口内を蠢く。

「うっ…ンンっ」

 甘やかで情熱的なキスだった。静まり返るスペースに、佐々木先輩のせいで卑猥な水音が鳴る。ゾクッとするその快感に立っていられなくて、大きな体にしがみついたら、肩にかけている鞄がズリ落ちてしまう。