「裏切り者はあなただったんですね、時田警視監」

深夜の地下駐車場に呼び出し、創が組織の人間に密告をしている様子の音声データを再生させる。麗奈の声も、体も、何もかもが震えていた。ショックで泣いてしまいそうになるのを必死で堪える。

「……教えてください!何故こんなことをしたのか」

麗奈がそう声を荒げるが、創は「バレたか」と言うだけだった。時間だけが一秒、また一秒と過ぎていく。埒があかないため、麗奈は拳銃を懐から取り出し、その銃口を創に向ける。

「時田創、両手を上げてその場に跪きなさい!話したくないなら、取調室でじっくり話を聞きます!」

それは、好きな人に手錠をかけるということだ。彼は裏切り者の犯罪者だというのに、麗奈の中でまだ想いがあふれている。ぼやけそうな視界を、唇を噛んで必死に堪えた。

そんな麗奈を無表情で見つめる創は、命令に従おうとしない。銃を向けられているというのに、動揺の一つすら見せないのだ。その様子に、麗奈の中で焦りが生まれていく。彼に逃げられたら、誰が殺されるかわからない。