グレーな彼女と僕のブルー

「会いたかったの、恭ちゃんに。だから同じ学年になってまたイチから高校に通おうって思えたの」

 無言で紗里を見つめたまま、僕は何も言えなくなった。

 確かに子供の頃は仲が良かったと思う。

 僕の方は着せ替えごっこのせいで紗里に苦手意識を抱くようになったけど、紗里は違うのだ。一つ年下の可愛い従兄弟で、また仲良くしたい、そう思っていたのかもしれない。

「日曜のことなんだけど……」

 言いながら僕は無理やり紗里から視線を外し、話題を変えた。

「試合に行けば、俺が捻挫より酷い怪我をするって言ったよな?」

「……うん。言ったね」

「それって具体的には何が起こるんだ? 事故か?」

 紗里はノートに箇条書きにした最後の文章を指差した。

 "元々の未来と変えた結果がどうなるかは話せない"

「ごめん、言えないの。未来に起こる事だから、あたしが話すことで僅かなズレが生まれるんだと思う。結果が変わったら対処しようがない」

「……そう、なのか?」

 紗里は真剣な顔つきで頷いた。

「去年やっくんに、なんだけどね。まだ来てもいない未来を話してしまったことがあるの」

 その話をよくよく聞くと、問題となった日、立ち入り禁止の工事現場に忍び込む小学生が三人いたらしく、その中の一人が倒れた鉄パイプの下敷きとなるのを視たらしい。