絹糸のようなさらさらの髪を揺らし、小学生ぐらいの男女が家の中を走り回っていた。

 きゃっきゃ、と楽しそうに笑い声をあげながら、鬼ごっこのような遊びをしてふざけ合っている。

 少年は女の子みたいな顔立ちをした僕で、少女は天真爛漫に笑う紗里だ。

 お互いの親たちが買い物に出ていて、留守番を任された午後のことだった。

 電話機を置いた小さな棚のわきを走り過ぎたとき、僕の背後でガシャン、と甲高い音がした。

 突然のことに笑みが固まり、恐る恐る背後を確認した。

『うわぁ……どうしよう』

 情けない声を上げて、僕は床に散らばった花瓶の破片を見ていた。それまで生けてあったカーネーションの花も、水と破片にまみれて床に寝そべっている。

 紗代子おばちゃんにぜったい怒られる、幼い僕は数時間あとのことを想像し、オロオロと狼狽えていた。

『大丈夫だよ!』

 胸の前で二つの拳を握りしめ、突然、幼いサリーちゃんが少年の僕を励ました。

『あたしと恭ちゃん、いっしょに割ったことにしよう。そんでふたりで怒られよう!』

『それ意味あるの?』