「でも。あたしが怪我の原因を作ったのは事実だし……」

「それでも……、ごめん。酷いこと言って」

 彼女の白い肌にまつ毛の影が落ちた。うっすらと泣いた跡が見える。心臓の奥がぎゅっと絞られるような感覚がして、それには気付かない振りをした。

「うん」と紗里が頷き、さっきと同様に欄干に手を添えた。

「なぁ、紗里」

「うん?」

「何で試合には行かない方がいいのか、教えてほしいんだ」

「……うん、そうだよね」

 視線は下方を流れる川に向けたままで、紗里は曖昧に口角を上げた。

捻挫(それ)よりもっと、酷い怪我を負うからだよ」

 捻挫よりも酷い怪我……?

「それって。日曜日(あさって)の話、だよな?」

「そうだよ」

 寂しそうな横顔が夕陽に照らされる。明るいベージュの髪が風に靡いてふわふわと揺れた。

 口内に若干溜まった唾液をゴクリと飲み込んだ。

「紗里は……未来が分かるのか?」

 今の今まで、僕はこの質問を避けてきた。現実的に考えれば、そんなことあるはずがないと思ったからだ。

 そんなわけないじゃない、と否定されるのが怖かったからだ。