グレーな彼女と僕のブルー

「彼氏いるか、……は聞けてないよな?」

 無言で頷く誠の肩にポンと手を置いた。

 あいつはやめておけ、と喉元まで出掛かるが。僕はすんでで口を噤んだ。

 僕の方こそ、これ以上紗里に関わるのをやめた方が良いのかもしれない。

 そう分かっていながら、あの妙な、未来予知の行動が気になって仕方なかった。

 紗里のことを考え、紗里に優しい目を向ける古賀先輩を思い出した。

 胃の奥をギュッと搾られるような嫌な気持ちが肺全体を覆い尽くし、充満していく。

 胸糞わるい。

 なんなんだ、いったい。


 *

 それから数日を経た金曜日。

 校庭の隅で動く紗里を見かけた。

 四時間目を終えた移動教室からの帰りで、一人で渡り廊下を歩いていた。

 誠は購買へ急ぐとかの理由でチャイムが鳴るなり走って行ったので、教室で合流するつもりだ。

 なにやってるんだ、あいつ。

 紗里はどういうわけか校庭の隅に角材を置いていた。

 眉を潜めて考える。突如として脳内が明るく照らされた。電球がパッと光るかの如く、閃くものがあった。

 もしかして……。また?

 今まで見てきたカラーコーンや浮き輪のことを思い出した。ついでを言えばスーパーで駄々をこねる子供にラムネ菓子を渡していたことも思い出す。