グレーな彼女と僕のブルー

 なんなんだ、無性にイライラする。

 紗里を悪く言うあの女子たちが鬱陶しくてたまらない。

「おい、おまえらつまんねーこと言ってねぇで、さっさと教室にあがれよ?」

「っな、うるさいわねぇ、古賀には関係ないでしょ!」

 いつの間にか階段から古賀先輩が降りて来ていた。

 紗里の悪口を言っていたのは二年の女子だったのか。

 彼女たちは古賀先輩に口を挟まれ気を悪くしていた。

「うるせぇのはどっちだよ」

 先輩の睨みと舌打ちに気圧され、三人の女子たちはそそくさと逃げるように立ち去った。

「おはよう、古賀っち」

「……おう」

 紗里とは距離を取っていたはずだが、同じフロアで部活の先輩と出くわしてしまったのでスルーもできず、僕も仕方なく「おはようございます」と挨拶をした。

 古賀先輩は一瞬だけ僕を見て、また紗里に視線を戻した。

「あんなの気にすんなよ」

「……うん。ごめんね、いつも」

 紗里を見る古賀先輩の表情は柔らかく、その目に特別な感情が見えた。

 平静さを装い、僕は彼らとすれ違った。そのまま二階へ続く階段に足をかけて黙々と昇っていく。

 ……くそ、なんなんだ。