グレーな彼女と僕のブルー

 紗里の心情がいまいち読み取れず、首を捻った。

 黙々と歩く小柄な背から若干距離を取った。そろそろ正門が近い。

 いつも通り無関係を装いたくて昇降口には遅れて入った。

「ダブったくせによく平気な顔して来れるよねぇ」

 下駄箱で靴を履き替えていると、すぐそばに三人の女子がいて、誰かの陰口をたたいていた。

「一年は知らないからでしょ、赤城のあの目のこと」

「ああ、そっか。敢えて隠してるんだもんね〜。キモっ」

 向かいの下駄箱に革靴を仕舞う紗里は、我関せずと言いたげに、知らんぷりをしている。

 あの目のことって……。

 自然と土曜に聞いた紗里の言葉を思い出していた。

 ーー「あたしの目ってさ。……変なんだぁ」

 ーー「色を合わせておかないと気持ち悪いって言うのかな、だからコレを付けてるの」

 土曜に聞いた時は意味がよく分からなかったが。今なんとなく閃いてしまった。

 もしかして。左右で色が違う、とかそういうやつか?

 確かオッドアイとかそういう呼称があったはずだ。

 そう考えてから首を捻った。

 子供の頃の紗里を知っているが、両目とも普通に黒目だった。

 なおも紗里を見て下卑た笑いを浮かべる三人組をひと睨みした。眉間にシワが寄った。

 無意識に胸の辺りを手でグッと押さえていた。