横断歩道で足を止めた時。一匹の蜂が、そばの街路樹を探索するように飛んでいた。
……この時期に蜂は珍しいな。
何となく身構えて半歩遠ざかる僕とは対照的に、紗里は興味深く蜂が飛ぶさまを見つめていた。
危ないなと顔をしかめるが、蜂は紗里を避けるようにどこか遠くへ飛んで行ってしまった。
「恭ちゃん、知ってる?」と急に会話を振られる。
「蜂が巣を作り始めるのは、四月とか五月らしいんだけど……高い位置に作る年は雨が多くて、低い位置に作る年は風が強く吹いて大型台風が来るんだって」
「……へぇ、そうなんだ?」
知らない豆知識だ。
「うん。蜂はさ、どういうわけか春先には分かるみたいなんだよね。やがて来る災いを察知してそれに備えているなんて、蜂って凄いよね」
「確かに」
そこで信号が緑の人型に変わった。
「今年はどっちか確認はしていないけど。比較的雨の多い夏だったから、巣は高い場所にあるのかもね」
「……そうだな」
そう言ったきり紗里は真顔で前を見つめ、再び口を閉ざしてしまった。
ようやく口を開いたかと思えば昆虫の話だ。
なんなんだ……?
……この時期に蜂は珍しいな。
何となく身構えて半歩遠ざかる僕とは対照的に、紗里は興味深く蜂が飛ぶさまを見つめていた。
危ないなと顔をしかめるが、蜂は紗里を避けるようにどこか遠くへ飛んで行ってしまった。
「恭ちゃん、知ってる?」と急に会話を振られる。
「蜂が巣を作り始めるのは、四月とか五月らしいんだけど……高い位置に作る年は雨が多くて、低い位置に作る年は風が強く吹いて大型台風が来るんだって」
「……へぇ、そうなんだ?」
知らない豆知識だ。
「うん。蜂はさ、どういうわけか春先には分かるみたいなんだよね。やがて来る災いを察知してそれに備えているなんて、蜂って凄いよね」
「確かに」
そこで信号が緑の人型に変わった。
「今年はどっちか確認はしていないけど。比較的雨の多い夏だったから、巣は高い場所にあるのかもね」
「……そうだな」
そう言ったきり紗里は真顔で前を見つめ、再び口を閉ざしてしまった。
ようやく口を開いたかと思えば昆虫の話だ。
なんなんだ……?



