グレーな彼女と僕のブルー

 いつからだ……?

 うっかり嘆息を浮かべた。手にしていたシャープペンシルを机上に置き、僕は頭を抱えた。

 一体いつから、こんなに紗里のことを考えるようになったんだ?

 居候を始めてから一週間と一日。僕の脳内は彼女の情報をインプットし、まんまとその領域を増やし始めていた。


 *

 日曜と祝日の連休を終えて、また新しい週がスタートする。

 今週末は兼ねてから準備していた陸上競技会の試合だ。土曜の雨で練習が流れたぶん、昨日はみっちりと走り込んだ。その成果もあって、タイムはあと少しで目標値に届きそうだ。

 玄関の上がり段に座って靴を履いていると、見計ったタイミングで紗里が二階から降りてくる。とは言え、何か声をかけられることはなかった。

 一緒に行こう、と言われることもなく、朝の登校を同じくする。

 彼女は僕のすぐ前を歩いていたので、立ち止まって距離を取っても良かったのだが。何となくそのままの歩調で歩いていた。

 多分、なにかしら話しかけられるのを待っていたんだと思う。

 珍しく、今日は無言だな。

 そう思ったところで、いや違うなと気が付く。

 紗代子叔母さんの誕生日会以来、紗里はどういうわけか大人しいのだ。