グレーな彼女と僕のブルー

「そっ。色を合わせておかないと気持ち悪いって言うのかな、だからコレを付けてるの」

 言いながら紗里が自身の左目を指差した。

「なんだよそれ、意味わかんない」

 困惑する僕を見て、紗里がいつものように口角を上げる。

 穏やかな笑みに、一瞬だけ胸が熱くなる。

 そこでふと、紗里が足を止めた。左目を手で押さえ、ある一角をじぃっと凝視している。

「……なに?」

 紗里が見ている場所は、こじんまりとした駄菓子屋だった。

「ごめん、ちょっと寄り道するね?」

「あ……。うん」

 小走りで駆けて行く背中を見送り、思わず首を捻っていた。

「あ、テープ貼って下さい」

 遅れて駄菓子屋に入ると、彼女は既に買うものが決まっていたらしく、小さな丸い筒に入ったラムネ菓子を手に戻ってきた。

 いかにも子供が好きそうなパッケージでちゃっかりお店のテープまで貼ってある。

「ごめん、お待たせ」

「……いや」

 まさかとは思うが、ケーキにそのラムネを飾るつもりか?

 気にはなるが、敢えて触れずにスーパーに向かった。

 スーパーに入ってから、紗里は彩りの良いパプリカを気に入り、カゴに入れていた。苺やみかんの缶詰に、紙パック入りのホイップクリームも二つカゴに入れた。