グレーな彼女と僕のブルー

 主菜のハンバーグと唐揚げのことを思うと、味見の必要性がないので、ニンジングラッセあたりで呼ぼうと考えた。

「それにしてもさ、ハンバーグって結構手間なんだね。もっと簡単かと思ってたよ」

 午前中の奮闘を思い出し、紗里が空を見上げてため息をついた。

 そういえば量が量なため、肉だねがなかなか混ざらないことにウンウン唸っていたな。

「いや。作り方は人それぞれだからもっと楽に作る人はいるよ。俺の工程がちょっと面倒なだけで」

「へぇ〜、そうなんだ?」

「うん。今までに色々な方法で作ってみたんだけどさ。豆腐と卵のつなぎとパン粉と玉ねぎのつなぎを、それぞれレンチンしてから混ぜる方が美味しいなと思って。
 あと、合い挽きミンチに混ぜる前は冷まさなきゃいけないから、時間もかかるし」

 紗里の言うように多少は手間だが、正直ハンバーグの味には自信があった。

「んふふっ」

 紗里が横目で僕を見て、嬉しそうに笑った。

「いいね、恭ちゃん。料理人とか向いてるかもよ?」

「んな大袈裟な」

 そう謙遜しつつも、顔が緩んでしまう。

 自身の試行錯誤を褒められたような気がして、子供みたいに喜んでしまう。

 とは言え、まだ食べてもらったわけじゃないけど……。