グレーな彼女と僕のブルー

 困惑する僕を見て、紗里がお願い、と両手を合わせて食い下がった。

 その押しに負け、気付いた時には「分かった」と返事を返していた。


 *

「ちょうど雨が止んでて良かったね」

「そうだな」

 長傘の持ち手部分を腕に掛けながら、紗里が浮かれてステップを踏んだ。軽やかな足取りを見ていると、そのうちスキップに変わりそうな気がして嘆息がもれた。

 空は相変わらずの曇天で、この切れ間は一時的なものだ。夕方頃にはまた降り出しそうなほど、空気が湿っていた。

 買い出しのスーパーまではそう時間もかからないので、運が良ければ雨には当たらないだろう。

 あのあと朝ご飯を済ませ、親たちが出勤したのを確認するや否や、僕と紗里はキッチンを占領した。

 八時半を過ぎた頃、大和がのそっと起きてきて、あくび混じりの声で「何やってるの?」と尋ねてきた。

 紗里がサプライズ企画を説明すると、大和は嬉しそうに目を輝かせた。

 自分の誕生日でもないのに、「晩御飯が楽しみだなぁ」と浮かれ、「味見が必要な時は呼んでね!」と要望を入れられた。