グレーな彼女と僕のブルー

 折りたたみテーブルを前に座った彼女がちょいちょいと手招きをする。僕は俯きがちに首の裏に手を乗せ、縮こまるように腰を下ろした。

 差し出されたノートを受け取る。

 ……うわ。

 ノートにも性別があるのだろうか。そう思えるほど、柔らかで可愛らしい雰囲気を存分にまとっていた。

 最初のページを開くと、丁寧で丸みのある、読みやすい字が等間隔に並んでいた。

 ①からあげ
 ②ハンバーグ
 ③レタスとトマトの簡単サラダ
 ④ニンジンのグラッセ
 ⑤バースデーケーキ(フルーツは苺とみかん)

「あのね。個人的にはハンバーグと唐揚げが食べたいんだけど……恭ちゃんできる?」

「まぁ……それなりにはできるよ。この五番なんだけどさ、ケーキもスポンジから焼くの?」

「うん。あたしご飯系の調理はいまいちなんだけどさ。お菓子作りは好きだから時々作るし。製菓器具もそろってるんだよ」

「へぇ〜。逆に俺はお菓子は作ったことないわ」

「え、そうなんだ?」

「うん」

 意外、と言いたげに紗里が目を丸くするが、そこまでの女子力を求められていたことに逆に驚く。