グレーな彼女と僕のブルー

 けど、以前(まえ)に焼飯を作った時、僕から習いたいと言っていたしな……。

 困って頭を掻いていると、「ねっ、いいでしょ?」と紗里が粘り強く訊いてくる。

「……まぁ。紗代子叔母さんにはお世話になってるし」

 僕の返事を聞くなり紗里が破顔し、「そう来なくっちゃね!」と声を弾ませた。急に腕を掴んで引っ張ってくる。

「っえ、ちょっと」

 いつかの時のように冷蔵庫の前まで連れて行かれた。

 キッチンスペースに入ると座って朝ご飯を食べる母と叔母さんが「おはよう、恭介」と声を掛けてくれる。

「あ、うん。おはよう……ございます」

 叔母さんの手前、挨拶が他人行儀になるが、彼女たちはちっとも気にせず朝のお喋りに興じていた。まだ出勤前で余裕があるのだろう。

 紗里が冷蔵庫を開けて中の食材を色々と見せてくる。

 鳥もも肉のパックや合挽きミンチ、豆腐に卵、トマトにレタスなど。冷蔵庫の食材を見て様々なレシピが頭に思い浮かぶのだが。

 紗里は一体何を作りたいのだろう?

「ママには内緒だよ、サプライズだから」

 こっそり耳打ちをされて心臓が飛び跳ねる。