グレーな彼女と僕のブルー

 急いで着替えを済ませて、内開きのドアを開けた。

 ごめんね、と可愛らしく小首を傾げ、紗里が柏手を作って謝った。

「いつも思うけど、なんで返事する前に戸を開けるんだよ」

「えへへ、つい癖で」

「ノックの意味ないじゃん」

 呆れて嘆息すると、紗里は今さらながら「おはよう」と挨拶してくる。

「それで……? 何の用だよ、朝ご飯か?」

 ううん、と首を振り、紗里が強引に部屋に入ってきた。

 元は彼女の家だから別に構わないのだが、何となくプライベートに踏み込まれた気がしてモヤっとする。

 若干顔をしかめた僕になどお構いなく、紗里は「あのさ」と話し始めた。

「この天気だし、恭ちゃん部活休むでしょ?」

「うん……まぁ。そうするつもりだけど」

 休日でも紗里の両目はグレーで、いつでもカラーコンタクトを着けているんだなとふと思う。

「今日さ。ママの誕生日なんだ」

「……あ、そうなんだ?」

「うん。だからね、一緒にご馳走を作って欲しいの」

「……一緒に?」

 自然と眉根を寄せていた。

 大和の情報によると紗里は料理が苦手だ。