グレーな彼女と僕のブルー

 雨の日には蜘蛛は糸を張れないと前に本か何かで読んだ気がする。だからこの巣は昨日降り出す前に張られたものだろう。

 取り除くべきか迷ってそのままにした。餌となる虫を待つ蜘蛛の気持ちを尊重したつもりだ。

 さっきまで寝ていた布団をたたみ終えたとき。折りたたみテーブルの上で充電しっぱなしのスマホが鳴った。誠からのメッセージだった。

【今日の部活は筋トレのみだから自由参加だってさ】

 やっぱりか……。

 時刻はまだ七時前だが、昨日見た天気予報によるとこれから昼までは本降りになるそうだ。おそらく部活中は土砂降りだろう。

 筋トレをしに行ってもいいし、そもそも筋トレだけなら家でやってもいいし、と迷いが生じる。

 いつの間にか勢いを増した雨が窓を叩いていた。

 この雨じゃあなぁ……。

 出掛ける気分を削ぐには充分な雨量だ。

 とりあえず部屋着から着替えようと思い、Tシャツの裾に手を掛けて頭をくぐらせた。

 コンコン、とノック音がし、すぐさま扉を開けられる。

「っあ、おい」

「おっと!」

 僕が焦って背を向けたのと、紗里が慌ててドアを閉めたのが同時だった。