「まぁ。赤城さんのことをタカギさんだと勘違いしてたわけだから、諸々のことは許してやるし、女子が苦手な恭介のことだ。さすがに同居は知られたくないだろうから黙っててやる。
 なんてったって、コレ! 赤城さんのラインのIDゲットできたからな!」

「っえ、交換したのか?」

「おうよ、それもこれも恭介のおかげってわけだ。サンキューな!」

 わはは、と上機嫌に笑いながら僕の背中をポンとはたくと、誠は踵を返して教室へ戻って行く。

 紗里との同居は知られたが、誠は他言しないと言っていたしどうにか丸く収まりそうだ。

 僕はその場で脱力し、踊り場の床にため息を吸い込ませた。

 問題はあいつ、赤城 紗里だ。こうも簡単に同居の事実を話してしまうのだから、今のうちに手を打っておかなければいけない。

 周りに言いふらさないように口止めをする必要があった。

「よし」

 教室の後ろ扉まで戻り、遠目に三組をチラッと盗み見る。

 紗里は……いない?

 とっくに登校はしているはずだが、トイレか何かか?