放心してどこか力の抜けた誠をそのまま置き去りにする。勿論、紗里も一緒に。

 予定はだいぶん狂ってしまったが。僕はようやく紗里の前から逃げ出した。

 紗里から離れること、つまり一緒にいるのを誰かしらに目撃されないことを念頭に置いていたので、一番肝心な部分がすっかり抜け落ちていた。

 自分がこうも頭の回らない人間だとは思わなかった。一生の不覚だ。

 僕より十分程度遅れて教室に入ってきた誠は、真っ先に僕の前へと駆け寄りくいっと顎を持ち上げ、あさっての方向を差した。

「ちょっとツラ貸せよ」

 誠にしては大真面目な顔つきだった。しぶしぶ席を立った。

 紗里について何かしらの尋問をされるのか、と憂鬱が支配し、今朝一緒にいた理由をどう答えるべきか頭を悩ませた。

 廊下に出て、ひと気の少ない階段の踊り場へ移動する。

「恭介。おまえ、赤城さんと一緒に住んでるんだってな?」

「……え」

 紗里と同居していること、これは誰にも知られちゃいけないことだったのに。

 ***