ビクン、と肩が揺れた。

 首振り人形のごとく小刻みに周囲を確認すると、いつの間にか正門が見える場所まで歩いていた。僕に向かって手を挙げている誠を視界にとらえ、すぐ側に立つ紗里の存在を思い出す。ハッと息を呑んだ。

 まずい……。

 僕はピキッと表情を固めたまま、近付いて来る誠に再度視線を投げた。彼はアッと口をあけて驚愕と動揺をあらわにしている。

「っえぇえ!? あああ、赤城さんっ!?」

 誠は目を皿のようにして、なんならその目玉が飛び出そうなぐらいにひん剥いて、紗里を見た。

 言うまでもなく、頬から耳にかけて赤面している。曖昧に差した指先もぶるぶると震えていた。

 紗里はそんな誠を冷静に見つめ、僕に視線を向けた。

「ああ。恭ちゃんの友達、だっけ?」

「……っ、」

 頼むから黙っててくれ。

「"恭ちゃん"??」

 幾らか裏返った声としかめっ面で誠が僕を見る。その目は明らかに"どういうことだ?"と物申していた。

 っああ、もう。めんどくさいなぁ!

「こいつは俺の従姉弟(いとこ)なんだよ、それだけだから」

「………へ。いとこ……?」

「じゃ。そういうことだから」