「……え。嘘でしょ??」

 ふいに右目が捉えた映像を見て、あたしは絶望にも似た気持ちで呟いていた。

 左目を押さえながら恭ちゃんの家の前に佇み、暫し動けずに固まっている。

 右目が視ているのは火事の映像だ。

 従兄弟の隣家から出火し、酸素を含んだ炎はごうごうと燃え広がっていく。今まさに全焼する勢いだ。

 そしてその火は隣りの阪下家、恭ちゃんの家へ燃え移ろうとしていた。

 外観のものから家の内装へと映像が切り替わる。自然と唇が震えた。

 テレビがあり、コタツテーブルが置かれたリビングらしき一室に、若い女の人が見えた。煙を吸いすぎたのだろう、逃げることも叶わずに倒れている。意識は既にない様子だ。

 前方からの火と天井を焼き尽くしたそれが女の人へ襲いかかる。あっという間だった。赤い炎は彼女を包み、彼女の死を伝えていた。

 たまらずにぎゅっと目を瞑る。熱くなった目頭から涙が滲んだ。なにか込み上げるものを感じてそれを飲み下す。洟をすすった。

 顔を上げて未だ燃えていない住宅二棟を見つめる。

 今日あたしがここに来たのは、自身の単なる焦りからだった。