「私はさぁ、隣りのクラスの坂下くん……いいと思うけどなぁ〜」

 昼休み、友達とお弁当を食べていると斜め後ろの席からガールズトークが聞こえてきた。自然と耳が傾いた。

「ああ、なんかそれ分かる。坂下くんって可愛いもんね、守ってあげたくなる感じ」

 一人の共感にもう一人が「確かに、言われてみれば」と相槌を打つ。

「そうそう! 坂下くん、時々しか笑わないんだけどさ、笑顔とか超、天使だよ〜。まじ尊い!」

「分かる分かる〜!」

 分からんでよろしい、小娘ども。

 後ろで交わされる三人の会話に、ことのほか耳がダンボになってしまう。お箸を持つ手に自然と力が入った。

「どうしたの? 紗里」

「え?」

「ここんとこ、シワ。お腹痛い?」

 あたしの向かいに座った友達が眉間を指差して眉を下げた。

「……あ〜、ううん。何でもないよ」

 あたしは首を振り、友達同士の会話にまた没入した。お弁当の残りを食べながら、さっきまで話していたファッションやコスメの会話に同調する。

 いかんいかん。恭ちゃんのことになると、つい我を忘れてイラってしまう。