グレーな彼女と僕のブルー

「あのさ。ずっと前から気になってて聞けてなかったんだけど」

「なに?」

「火事があった日の朝、おまえ大和に言ったんだってな? 俺がその日の夜に来ること」

「……ん〜? なんのこと〜?」

「とぼけんなよ。八年ぶりに、しかもいきなりの火事で居候することになったのにさ。"今夜恭ちゃんが来る"って、完全に予言者だろ」

「ふふふっ、だよねぇ〜」

 紗里は笑い、ホームに並んだ人々の群れから少し離れたところで立ち止まる。

「それはアレだよ」

「準備予知?」

「っそ。火事の映像を視てからうちに帰ったとき、玄関にボストンバッグを置く恭ちゃんの姿が視えたの」

「……え」

 ということは、そのあとに俺の危機も視えたということか……?

 最初の危機である、部活に行かなければ交通事故に遭う、というやつだ。

 三日月型に細めたグレーの瞳に捕らわれ、暫し放心する。ぶらりと下ろした僕の左手を取り、再び紗里が右手を重ね合わせた。

「ごめん、恭ちゃん。この間の"あれ"、取り消してもいい?」

「……ん? あれって?」

「"あたしと関わらない方がいい"って言ったやつ」

「……それは。別に……」