グレーな彼女と僕のブルー

 改札口手前の壁に埋め込まれた液晶ディスプレイの中で、女性アナウンサーが原稿を読んでいた。お昼のニュース報道を見て、無意識に足が止まる。

《先月一日、〇〇市で起こった住宅二棟の火災について、同市に住む三十代の男性が放火の疑いで逮捕されていたと今日警察からの発表で明らかとなりました》

 青い画面を背景に、犯人の男の個人情報が開示され、火元となった家の住人に数ヶ月にわたってストーキングをしていたと報道された。

「こいつが犯人だったのか……」

 お隣りの蓮田さんに、精神的な苦痛を与えていたやつだ。

 あちらこちらに動き回る人の群れの中で、男の容貌を注視する。見たことのあるような、ないような、そんな顔つきだ。

 隣りに立つ紗里は真顔で目を細めたままで、何も言わない。

 て言うか。既に逮捕されてたんだな……。

 その事実をこうして(しら)され、ついため息を浮かべた。

 切符を購入する際、これまでずっと繋いでいた手が離れた。羞恥心からホッと安堵するような、それでも寂しいような複雑な気持ちになる。

 改札口を抜け、ふとした瞬間にまだ紗里に確かめていなかった疑問が浮上した。