グレーな彼女と僕のブルー

 満面の笑みでへへっ、と白い歯を見せて、紗里がまた隣りに並ぶ。繋いだ手にきゅ、と力が込められた。

 それだけで心が震え、呼吸のペースを乱される。恥ずかしくて居た堪れないのに、やはりそばにいたくて僕は下唇を噛んだ。好きだと思ってしまう。

「刑事さんにはね。やっぱり……燃やした意味を聞かれたの。動機ってやつ」

「……え。そ、それで? 準備予知のこと……話したのか?」

「……うん。そんなことあるはず無いって頭から否定されると思ってたんだけどね、それこそ精神鑑定の必要性を疑われてさぁ」

 信号のない横断歩道で彼女は左右を確認し、僕の腕を引いた。そこで周りの風景に目を留める。行きに歩いた道だ。最寄りの駅に向かっているのだと分かった。

「でも、あの刑事さんは真面目に聞いてくれたよ。"にわかには信じ難い"って言われたけど、ちょうどタイミングよく刑事さんの周りで灰色の影が視えたから。それで証明してみせますって啖呵を切ったの」

 なるほど。

「その時間帯が今日の午前中だったから、昨日はそのまま警察署に泊まったってわけか」

「っそ」

 ちなみに、あの刑事にどんな危機が迫っていたのかを聞いたら、車のブレーキに細工をされる、というものだった。

 僕を人質に取ったあの男は、元々刑事に恨みがあったらしい。