グレーな彼女と僕のブルー

「もういいだろ、腕はなせよ。何ともなかったんだから」

 踵を返し、警察署の駐車場から出ようと足を動かすのだが。紗里がくっ付いているせいで非常に歩きにくい。

「えへへっ、だって恭ちゃんの腕あったかいんだもーん!」

「……っ、ばーか、なに言ってんだ」

 紗里の柔らかい感触と甘い匂いで、さっきからドキドキが止まらない。

 ヒトの気も知らないで……。

 そのままわざとそっぽを向くと、「恭ちゃんってさ」とまた話しかけられた。

「けっこう度胸あるよね。さっきカッコ良かったよ」

「そ、そうかな……」

 胸のあたりにポッと火が灯されたみたいに熱くなる。素直に嬉しい、と感じていた。

 紗里はスルリと腕を解き、僕の左手に彼女の右手を重ね合わせた。

 えっ……。

 赤い顔のまま目を横にスライドさせると、紗里も頬をピンク色に染めていて、心底嬉しそうに微笑んでいた。

「これでいいんでしょ?」

 キラキラとした笑みを向けられて、僕は不本意な拒絶を諦めた。大人しく顎を引いてしまう。

 なぜかそのまま手を繋いで歩くことになった。はたから見れば高校生カップルだ。

 紗里の小さな手を握り、可愛いなと思ってしまう。