グレーな彼女と僕のブルー

 紗里の準備予知については口外できないので、火をつけた動機に関してはイタズラということにした。

 刑事は僕の話を聞きながらキョトンと目を丸くした。そしてフッと笑い出す。

「そうだね。ごめんごめん、本気で共謀説なんかを疑っていたわけじゃないんだ。ただ、彼女の取った行動はあまりにも不可解だったからね。一度じっくりと話を聞かせてもらおうと思ったんだよ」

 ……え。

「そ、そうなんですか?」

「ああ。結果、少しだけその力を借りることにはなったけど……まさかあそこでキミに危害が加わるとは思わなかった。本当に悪かったね」

「……いえ」

 刑事はその後、爽やかな笑みを浮かべて立ち去った。すれ違いざまに「あの話、真面目に考えてみてね」と紗里に声をかけていた。

 あの話ってなんだ?

 それに関しては首を捻るしかなかったが、さっき刑事が話した内容から分かったことがあった。

 やはり紗里は準備予知を遂行したんだ。それも刑事たちの目の前で。

 もしかすると、それが容疑を晴らす唯一の手段だったのかもしれない。

 それで昨日は帰って来なかった、ということか。